大島汽船株式会社は、気仙沼湾と大島周辺で「気仙沼ベイクルーズ」を運航しています。船上からは、魚市場、大型漁船、造船所、養殖いかだ、気仙沼湾横断橋、大島大橋など、港町ならではの風景を一度に見ることができます。
ただし見どころは多いのですが、気仙沼観光の中で「なぜベイクルーズに乗るべきなのか」まではお客様に伝わりにくく、更なる集客が課題でした。宮城県よろず支援拠点では、「遊覧船をどう宣伝するか」ではなく、ベイクルーズが「気仙沼観光で果たす役割は何か」という問いから支援を開始。ベイクルーズに乗る理由をしっかり伝えるブラディングに着手しました。
ブランドメッセージを整え、パンフレット、ポスター、Webサイトへ展開し、令和8年の営業開始に向けてリニューアルする取り組みが始まりました。


支援のポイント
支援内容
見どころは多いが「点」になっていた
ベイクルーズは見どころは多いものの、気仙沼に来て遊覧船に乗ろうとする人が伸び悩んでいる、という悩みを抱えていました。
実際にベイクルーズには、気仙沼大橋を真下から見上げる迫力、船を追うウミネコ、漁船が並ぶ岸壁、リアス海岸の景観など、多くの魅力があります。しかし、それぞれを個別に「点」で紹介するだけでは、観光客が乗ってみたいと感じるまでには至っていないことが課題でした。
佐藤コーディネーターは、「船の見どころをどう売るか」に取り組むのではなく、そもそも気仙沼観光における当社の位置づけ、そして気仙沼という町そのものの意味付けを捉え直し、気仙沼ベイクルーズの存在価値・提供価値を再定義することから始めました。
気仙沼という街は「海」から始まっていた
佐藤コーディネーターが気仙沼の観光資源を再整理。気づいたのは、その中心には常に海があったということです。
湾の地形が天然の良港をつくり、港が漁業や造船を育てる。漁業が食文化を生み、船を通じて各地の人や文化が行き交う。山から海へ流れ込む養分が、牡蠣やワカメを育てる。海は、気仙沼にある観光資源の一つではありません。町の産業、仕事、暮らし、文化が始まった場所でした。
そして、そのつながりを一度に見渡せるのが、海上から町を眺める気仙沼ベイクルーズなのではないか、と考えました。船上では、単に景色を見るだけではなく、ガイドが停船している船の形や役割、港の歴史、橋の由来、養殖や造船の仕組みなどを詳しく紹介します。こうしたガイドを聞く前と後では、見る風景の意味が変わります。
ここから、佐藤コーディネーターは一つの仮説を提案。
海から気仙沼を眺め、街の背景を知れば、気仙沼をもっと好きになるのではないか。
気仙沼観光に来たら、まずベイクルーズという体験価値へ
気仙沼には、海から始まった町の歴史や産業を、一つの流れで理解できる常設の博物館や歴史館などはありません。一方、ベイクルーズでは、魚市場、大型漁船、造船所、橋、大島、養殖いかだといった「現物」を、実際の町の動きの中で見ることができます。
そこにガイドの説明が加わることで、乗客は、
- なぜこの湾に港ができたのか、震災を経てどう変化してきたのか
- なぜ大型漁船が並んでいるのか
- 海と造船、養殖、食文化がどうつながっているのか
を、目の前の景色と一緒に理解できます。
つまり博物館や歴史館のように町を学べる一方で、橋をくぐる迫力や海風、ウミネコとの触れ合いといったエンターテインメントもある。気仙沼ベイクルーズは、気仙沼の町全体を展示物にした「動く博物館」のような機能を持っているのではないか。
この気づきから、ベイクルーズを「景色を見る遊覧船」ではなく、海から気仙沼を知り、その後のまち巡りを深くする最初の体験、つまり「気仙沼観光の入口」として位置付けました。そして、クリエイティブディレクターである酒井コーディネーターと共に、以下のステートメントを提案しました。
この街は、海に暮らしている。
気仙沼には、たくさんの見どころがあります。
海の幸、港の風景、町の歴史、人の営み。
けれどこの町は、どれもが「海から」始まっています。
湾のかたちが港をつくり、港が仕事と暮らしをつくり、その積み重ねが、気仙沼の文化になってきました。気仙沼ベイクルーズは、ただ景色を見るだけの遊覧船ではありません。
海から町を眺めることで、気仙沼の歴史と文化のつながりを、過去・現在・未来を含めて感じてもらうための時間です。海から、気仙沼を知る。
気仙沼の旅は、そこからはじまります。
海からはじまる、まち巡り。
気仙沼ベイクルーズ
「海からはじまる、まち巡り」。これが、ベイクルーズの価値であり、観光客の利用シーンでもある。
気仙沼に来たならばこの街の由来や文化を知るためにも、まずはベイクルーズに乗ってみる。こんな利用シーンを提供することで、気仙沼をもっと知りたい顧客のニーズに応えながら、集客の機能も果たすことができると考えました。
またデザイナーの山内コーディネーターにも支援に加わってもらい、この内容でWebサイト、インスタグラム、パンフレット、ポスターの刷新を支援。令和8年度の営業を順調に開始することが出来ました。
今回の支援で目指したのは、遊覧船の認知度を高めることだけではありません。
海から町を眺め、ガイドの話を聞くことで、気仙沼の風景の意味を知る。その後に港や市場、橋、大島を訪れると、それまで別々に見えていた観光資源が、一つの町の物語としてつながって見えてくる。
そして、町の成り立ちや人の営みを知ることで、気仙沼を以前より好きになる。ベイクルーズを、船上だけで完結する観光商品から、気仙沼との出会いをつくる最初の体験へと変えた支援事例です。






事業者さまの声
これまでは、橋やウミネコ、海の景色など、船から見えるものを中心に紹介していましたが、相談を通じて、気仙沼ベイクルーズには、気仙沼の歴史や産業、暮らしのつながりを伝える役割があることに気づきました。
「この街は、海に暮らしている。」「海からはじまる、まち巡り。」という言葉ができたことで、パンフレットやポスター、Webサイトで伝える内容も明確になりました。
今後は、ガイドによる案内も含め、船に乗った後の気仙沼観光がもっと楽しくなる体験を届けていきたいと考えています。
事業者情報
| 事業者名 | 大島汽船株式会社 |
| 住所 | 宮城県気仙沼市南町 |
| ホームページ | https://oshimakisen.com/ |
●主な支援コーディネーター

佐藤 創 (中小企業診断士、高度情報処理技術者、ブランドマネージャー、アドラー心理学マスタープラクティショナー)
診断士の戦略眼・財務戦略と、IT業界で培ったWebマーケティングや業務効率化、ブランドマネージャーとしての広告・ブランド戦略を総合する「企業の本質的な成長支援」が得意。
今回は観光資源を含めたご支援として、気仙沼観光と当社との関係性、そして顧客の好奇心に沿ったブランディングをする点に注意をしました。また「気仙沼ベイクルーズは何者なのか?」というブランド・アイデンティティを定義することが課題であることを、早期から事業者さんと共有できたことも、目線合わせができて支援が進んだポイントだったのではないかと思います。

酒井 裕希 (クリエイティブディレクター)
デザインや広告表現を企画するクリエイティブディレクションの専門家。
今回は、タグライン、ステートメント、キャッチコピーの検討と、キービジュアルのアイディア出し、パンフレット企画検討でクリエイティブ全般を総合的にディレクション支援した。

山内 恭輔(カメラマン、販促物デザイナー、Webデザイナー、ECサイト運営)
デザイン、写真・動画撮影、WEB集客の専門家。
今回は、Webサイトのトップページ構成と記載内容について、事前に定めたブランドコンセプトを反映させより効果的になるよう支援を実施。








