コーディネーターブログ

【チーフの視点】その「あたりまえ」に値段をつけよ。

宮城県よろず支援拠点チーフコーディネーターの佐藤です。
本コラムでは、中小・小規模事業者の経営における気づきをお届けします。

今回は、飲食店における「ファストパス(優先入店の有料化)」の事例をもとに、これからのサービス業の付加価値のつくり方について考えてみます。

<シリーズ:付加価値向上のヒント>
①効率化の時代に、顧客満足をどう設計するか?
②その「あたりまえ」に値段をつけよ。  ◀今回

1.「並ばない」にお金を払う

ファストパスとは、ディズニーランドのようなテーマパークにおいて、アトラクションに通常通り並ぶのではなく、追加料金を支払って優先搭乗できる、という権利のことです。

日経MJ(令和8年4月8日号)では、人気店で優先入店を有料化する仕組みが広がり、特に若年層を中心に利用が進んでいると報じられていました。いわゆる「飲食版ファストパス」です。数百円〜数千円でも、「時間を優先したい」というニーズに応え、客単価の維持・向上につながっているとのことです(以下引用記事を参照のこと)。

日経MJ 令和8年4月8日号

これまでは、「並ぶのが当たり前」、「早く入れるかどうかは運次第」というところでしたが、今は「時間をお金で買う」という選択肢が、明確に提示され始めています。

ただしこれは、何か新しいサービスを作ったわけではありません。もともと存在していた
・「早く入りたい」というニーズ
・「待たなくていい」という価値
を、「見える形にしてオプション化した」だけです。

2.おもてなしは「可視化」されないと価値にならない

日本のサービス業は「おもてなし」を強みとしてきましたが、その多くは「無料で提供している」、「誰にでも一律提供している」、「提供していることをお客様に伝えていない」といった特徴があると考えています。

本来は、「お待たせしない工夫」、「会話や気遣い」、「提供スピードの早さ」などは、「おもてなしとしての価値」ではありますが、日本ではこういったことは「当たり前」として埋もれてしまっています。

ファストパスは、その一部を切り出し「時間価値」として再定義したものです。
これは、既存のおもてなし、つまりサービスの価値の可視化です。
可視化しなければ価値は伝わらず、伝わらないものには誰もお金を払わないのです。

3.日本の中小企業に必要な視点

多くのサービス業は、「良いことをやっても利益に結びつかない構造」にあるのではないでしょうか。

  • いい取り組みと思って丁寧に対応するが、単に手間が増えただけ
  • 人材に求めるスキルや資質も高くなり、人件費も高くなる
  • しかし価格には転嫁できていない

この状態では、持続的な成長は難しいと思います。
だからこそ必要なのが、価値を分解し、選択制にし、しっかり課金することで付加価値を高めていくという考え方です。

「あたりまえのおもてなし」に値段をつける視点は、以下のような内容です。

  • お客様が価値を感じていることは何か?
  • 一部の顧客に強く支持されている要素は何か?
  • 切り出して商品にできないか?

考えるべきは無料をやめることではなく、選べる形にすることだと考えます。

4.さいごに

ファストパスは一過性の施策ではありません。
あたりまえの価値に、値段をつける時代に入ったというサインです。

必ずしも新しいことをやる必要はありません。
すでにやっているあたりまえのおもてなしを、可視化すること。
これができるかどうかが、これからの中小企業の成長を分けるのではないでしょうか。

===筆者について==============================
宮城県よろず支援拠点チーフコーディネーター 佐藤 創
(中小企業診断士/高度情報処理技術者/ブランドマネージャー1級)
経営を左右する戦略論とマーケティング、ブランディング、財務戦略をミックスした
独自の成長支援、財務戦略支援が得意分野。「中小企業・小規模事業者こそイノベーシ
ョンの担い手である」を合言葉に経営支援を行う。
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