コーディネーターブログ

【チーフの視点】効率化の時代に、顧客満足をどう設計するか?

宮城県よろず支援拠点チーフコーディネーターの佐藤です。
本コラムは「チーフの視点」として、中小・小規模事業者の経営者に向け、経営戦略に対する新たな気づきをお届けします。

今回は、飲食業をはじめとするサービス業の生産性が低い、という問題について考察し、私なりの解決の方向性を示します。

1.効率化にどこかモヤモヤを感じていませんか?

人手不足。
賃上げ。
原価高騰。

いま日本企業は、「生産性向上」を本気で考えるステージにいます。
たとえば飲食店ではコロナ禍もあり、スマホ注文やセルフレジが進み省力化が図られています。

その一方で、経営者であり、またひとりの消費者でもあるあなたは、なんとも言えない違和感を覚えていると思います。

「タブレット注文に、セルフレジ・・・。なんか味気ないなあ」

そうなんです。
特に、サービス業の生産性向上や効率化と表裏一体にあるのが、顧客満足度です。
日本における「おもてなし」の感覚と、生産性向上を、どのように考えていくのか。
ここに、日本のサービス業では生産性向上が進まない、根っこの問題があるのです。

2.飲食店の「ノー店員注文」はどう評価されているのか?

2026/2/6の日経MJに、飲食店のスマホ注文に関するアンケート記事が掲載されています。
記事の結論は、

  • タブレットやスマホによる「ノー店員注文」では、新商品の注文や、注文点数が増加する傾向がある。
  • 一方で、スマホ注文に対する満足度が36.5%・不満足は29.7%
  • スマホ注文の主要な不満足要因は以下。
     通信料・バッテリーが気になる
     操作が面倒
     QRコードを何度も読み込むのが面倒

とのことです。

日経MJの上記調査ではスマホ注文の不満は約30%
飲食店ではスマホ注文やセルフレジが進み、確かに生産性は上がりました。しかし同時に顧客の不満も増えています。

ここで考えるべきは
  「スマホ注文はダメだ」
という話ではありません。

むしろ逆です。これからの日本は、ある程度の不便を受け入れながら効率化を進めなければ、企業も地域も持続可能な未来は待っていません。

課題は、

「不便が生まれたあと、満足をどう再設計するか

なのです。これを解決しないと、サービス業における日本式の生産性向上は実現できません。

3.日本式「おもてなし」の功罪

日本の事業者は長年にわたり、

 「顧客満足 = すべてを満たす」 

という価値観で動いてきました。
今は薄れてきましたが「お客様は神様」という言葉もありました。
またクレーマー的?なお客様が「俺は客だぞ!」という主張をする背景にも、こうした価値観があるのではないかと思います。

・待たせない(=人手不足でお待たせしては悪い)
・丁寧に接客する(=人手によるフルサービスを常に提供する)
・不便ゼロを目指す(=24時間営業をして常に対応する)

これは人口増加をしていた高度成長期には強みであり、日本人らしい几帳面な対応でした。
大企業だけでなく、地元の小さな会社や飲食店まで「日本人的しつけ」という美徳で対応してきました。
世界から「日本はすばらしい」と称賛される、その所以です。

しかし今後は違います。
人口減少社会ではこのモデルは維持できません。サービス業で効率化や生産性向上を進めれば、必ず何かが失われると思います。

・対面接客の丁寧さ
・自由なオーダーの受け入れ度合い
・提供時間の迅速さ

すべてを守ることは不可能であり、誰しもが100点満点と感じられる顧客満足はもう作れない時代になってきているのではないでしょうか。

例えば、過去に日本でLCC(ローコストキャリア:格安航空会社)が始まった際、「日本ではLCCは根付かないのではないか。フルサービスのおもてなしが基本の日本で、価格が安くてサービスが良くないものは受け入れられない」という議論がありました。

しかし2024年の日本におけるLCC普及率は、国内線11.9%、国際線33.3%と普及しており、LCCを活用するのが当たり前の世の中になってきました(統計情報の出典はこちら)。

飲食業をはじめ、日本のあらゆるサービス業もこのような変遷をどんどん辿っていくと想定されます。
特に中小・小規模事業者は、「ある部分ではサービスレベルを落とすが、ある部分では大きく優れたお店」を目指していくことが、効率化によって生産性を向上させつつ、顧客満足度を高める方針だと感じます。
そしてこれはサービス業だけでなく、あらゆる業種の中小企業に共通する、いわば「日本企業の課題」です。

4.効率と満足を両立させる二刀流経営

日本型効率化とは、「不便を許容し、満足を再設計する経営」とも言えるでしょう。
効率化で多少の不満が出る部分は、事前にお客様に了解を得ておきますが、その代わりに別の価値を必ず上げていく。

■具体例
スマホ注文で接客レベルが下がるなら・・・
→料理品質を上げる
→価格を下げる
→提供スピードを上げる

セルフ化で温かみが減るなら・・・
→空間体験を上げる
→説明POPを磨く
→ストレスを減らす導線設計

人手不足の時代にすべての満足を守ろうとする経営は、必ず行き詰まると考えます。
日本のサービス業の生産性が上がらない理由は、単に技術や機械化だけに原因があるのではありません。
日本式の「すべてを満たそうとする設計」にあると考えます。

どの満足を捨て、どの満足を強化するか。この発想に変わった事業者から生産性を高めつつ、事業の独自性を手に入れ、そしてゆくゆくは国際競争力を取り戻していくことにつながる。それが日本型効率化ではないかと感じます。

5.さいごに

効率化とは、単なる不便の押し付けではありません。
「満足の再配分という設計」です。

さて、あなたの会社では効率化によって何を削りましたか?

□ 接客時間
□ 説明量
□ 待ち時間
□ 人員
□ 柔軟対応

ではその代わりにどんな満足度を上げましたか?

これが設計されていないと、あなたの効率化は「ただのサービス低下」になるかもしれません。

===筆者について==============================
宮城県よろず支援拠点チーフコーディネーター 佐藤 創
(中小企業診断士/高度情報処理技術者/ブランドマネージャー1級)
経営を左右する戦略論とマーケティング、ブランディング、財務戦略をミックスした
独自の成長支援、財務戦略支援が得意分野。「中小企業・小規模事業者こそイノベーシ
ョンの担い手である」を合言葉に経営支援を行う。
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