1722年(享保7年)創業の老舗着物店である、株式会社染萬さん。羽後街道と羽前街道の交差する交通の要衝にあった当店は、藍染め、手書き友禅染めを手掛けてきました。近年はライフスタイルの変化から、呉服販売、貸衣装レンタル、リサイクル、着付け教室、記念写真など、着物に関するさまざまなサービスへとシフトしてきました。
当拠点では、益力向上の取り組みを進めるなかで、12代目となる高橋社長とともに成長市場でもある「着物のリサイクル市場」への参入をサポートさせて頂きました(岩手県よろず支援拠点との「他拠点連携伴走支援」の事例です)。


支援のポイント
支援内容
当社12代目の高橋社長は、これまで呉服販売や貸衣装レンタルを中心に事業を展開してきたが、業界全体で着物需要が減少しており、収益力向上の取り組みを検討していました。そのなかで着目したのは「着物のリサイクル市場」。物価高騰等の影響を受け、リサイクル市場が伸長しており、着物の買取り販売事業に取り組みたいと、地元商工会とともに当拠点の相談に至りました。
当社はこれまで着物買取りの依頼ははほとんどなかったとのこと。コーディネーターがヒアリングしたところ、その要因の1つは、競合である全国展開するフランチャイズ買取専門店の知名度が高く顧客がそちらに流れていることが挙げられました。2つ目は、着物を保管している人は着物に愛着があり、「いつか誰かが着るかもしれない」と手放しにくい心理的抵抗があることが分かりました。
コーディネーターはこれらの状況から、競合と差別化するうえでは「機能的価値」と「情緒的価値」の両面から考えることが必要と考えました。サービスの機能面で優れていなければ競合に勝てないし、情緒的に共感を得られなければ顧客の心理的抵抗を乗り越えられないからです。これら両輪を満たす新しい買取りサービスの開発という難しいテーマが、当社の持続的成長のための課題であると判断しました。
コーディネーターは、機能面の差別化として「当店で着物買取りをした場合、ご家族が永年使える着物レンタルの割引きチケット」の付与を提案。レンタル事業を行っている強みや、創業300年という信頼と実績から「永年使える」という、競合では提案できない機能を付与することとした。
情緒面の差別化では、顧客心理に即した折込みチラシとキャッチコピーを検討。着物を手放す不安感を払しょくするため、岩手県よろず支援拠点のコピーライターである佐藤サブチーフとも連携して継続相談を重ねました。
決まったコピーは、
“「いつか着るかも」という不安を、「いつでも着られる」安心へ。染萬の着物買取り”。
更に地元商工会が小規模事業者持続化補助金の申請をサポートし、本事業の周知を後押しすることとしました。
本事業の展開を計画に盛り込んだ補助金は無事に採択となり、新サービスのチラシの作成と新聞折込を実施しました。
その結果、折込直後から文字通り「電話が鳴りやまない」状態の買取り相談が殺到。お客様からは「長年誰に相談していいかわからなかった」といった声があり、潜在的需要をとらえ、初月で20件以上の買取り相談につながるなど順調なスタートを切ることができました。



事業者さまの声

着物のある生活をこれからも当地域に根付かせたいという想いを、着物販売業界全体が縮小する中でうまく買取りの企画や、キャッチコピーにつなげて頂きました。
当地域に着物でお困りのお客様が多くいらっしゃったことに改めて気づくことができ、今後も事業継続を図っていくためのステップアップが出来たとうれしく思います。
事業者情報
| 事業者名 | 株式会社染萬 |
| 住所 | 〒981-4251 宮城県加美郡加美町字西町84-1 |
| WEBサイト | https://www.someman.co.jp/kamiten/ |
●主な支援コーディネーター

佐藤 創 (中小企業診断士、高度情報処理技術者、ブランドマネージャ―)
中小企業診断士。今回は新サービスの企画と開発、広告宣伝全般(キャッチコピー等)、事業計画全体を担当。

佐藤 和也 (岩手県よろず支援拠点コーディネーター/コピーライター)
大手広告会社のクリエイティブディレクターとして、マーケティング戦略や広告制作に携わった経験を生かし、中小企業を支援するために独立。「地方の小さな会社を、全国へ、世界へ」をミッションに、コンサルティングからコミュニケーション表現まで一貫サポート。新しい価値を見つけ、磨き、伸ばすことで、企業の成長を支える。








