こんにちは。
宮城県よろず支援拠点コーディネーターの酒井裕希です。
「キャッチコピーを10案考えてください。」
例えばこのように生成AIにお願いすると、ほんの数秒で、ずらりと答えが返ってきます。
もう少し親しみやすく。
もう少し高級感を出して!!
もっと短く。
別の切り口で・・・。
そんな注文にも、何度でも答えてくれます。
便利です。
少し前まで、アイデアを考える仕事では「なかなか思いつかない」ことが悩みでした。
ところが今は、むしろ逆です。
たくさん出てくる。だから、決められない。
AIによって、私たちの「つくる」は大きく変わりました。
今回は、そんな時代の「つくる」「えらぶ」、そして「すてる」について考えてみたいと思います。
AIで、「つくる」は簡単になった
キャッチコピー
チラシの構成
SNS投稿の文章
商品のネーミング
企画のアイデア
これまで時間をかけて考えていたものも、AIに問いかければ、短い時間でたくさんの案を出せるようになりました。ゼロからひとつを生み出す。そんな「つくる」ことのハードルは、以前よりずっと低くなっています。
もちろん、AIが出したものをそのまま使えるとは限りません。
それでも、アイデアの入口を増やしたり、自分では思いつかなかった方向を見つけたりするには、とても便利な道具です。
一方で、選択肢が増えたことで、新しい悩みも生まれています。
「どれが一番いいんだろう?」
10案出てきたら、今度は10案からひとつを決めなければならない。
「つくれない」という悩みが減る一方で、「決められない」という悩みが増えているように感じます。
「つくる」の次に、「えらぶ」がある
選択肢が増えれば、仕事が簡単になるとは限りません。
A案はわかりやすい。
B案はちょっと面白い。
C案は自分たちらしい気もする。
どれも、それなりに良い。
だから、迷います。
そんなとき、「なんとなく好き」「こっちの方が今っぽい」といった感覚だけで選ぼうとすると、なかなか決まりません。
必要なのは、
「どれが良さそうか」ではなく、
「どれが目的に合っているか」という視点です。
誰に届けたいのか。
何を一番伝えたいのか。
見た人に、どう感じてほしいのか。
そして、その後どう動いてほしいのか。
基準が決まると、選び方が変わります。
AIがたくさんの答えを出してくれるほど、最後に問われるのは、私たち自身の「何を良しとするか」です。
これからは、「つくる力」と同じくらい、「えらぶ力」が大切になっていくのかもしれません。
でも、「えらぶ」より難しいことがある
実際の広告や情報発信の現場では、さらに難しいことがあります。
それは、「すてる」ことです
せっかく考えたから、この情報も入れたい。
このサービスも大事だから載せたい。
この写真も良いから使いたい。
A案のここも、B案のここも捨てがたい。
そうして最後に、
「じゃあ、全部入れましょう」
となってしまう。
経営者にとって、自社の商品も、サービスも、こだわりも、歴史も、全部大切です。だからこそ、捨てるのは難しい。けれど、伝える側にとって「全部大事」であることと、受け手に「全部伝わる」ことは、同じではありません。
言いたいことが10個並んでいる広告より、「これだけは伝えたい」がひとつ見える広告の方が、記憶に残ることがあります。
何かを強く伝えるためには、ほかの何かを小さくする。
ときには、載せない。
「すてる」は、伝えるために必要な仕事でもあります。
「すてる」ことは、残すものを決めること
デザインには、「余白」という考え方があります。
何も置かれていない白い場所を見ると、「もったいないから、ここにも何か入れよう」と思うことがあります。でも、余白は余った場所ではありません。
文字を読みやすくする。
写真を印象的に見せる。
一番伝えたいものに、視線を集める。
余白は、大切なものを、大切に見せるための場所です。
情報も同じです。
何かを捨てることで、残したものが見えてくる。
だから、「すてる」というのは、単純に情報を減らすことではありません。
何を残すかを決めることです。
たとえば、新しいお客様にお店を知ってもらうためのチラシなら、会社の歴史をすべて説明する必要はないかもしれません。
商品の魅力を伝えるSNS投稿なら、商品の特徴を10個並べるより、その人が「これ、私にいいかも」と思えるひとつを残した方が伝わるかもしれません。
ここで大切なのは、
「これは重要な情報か?」だけではなく、
「これは、今回伝えるべき情報か?」と考えることです。
会社にとって重要な情報でも、今回の発信には必要ないことがあります。
捨てることは、その情報の価値を否定することではありません。
今回は、言わない。 その判断も、立派な情報設計です。
AIは、「すてる」ところまで決めてくれるだろうか
もちろんAIに、「この10案から、一番良いものを選んでください」と聞くこともできます。理由も説明してくれるでしょう。
さらに、「この文章から不要な情報を削ってください」とお願いすれば、文章を短くすることもできます。
では、AIに全部決めてもらえばいいのでしょうか?
おそらく、そう単純ではありません。
どんなお客様を大切にしたいのか。
どんな会社でありたいのか。
何を一番届けたいのか。
何は、今回は言わなくてもいいのか。
そこには、事業をする人の意思があるからです。
AIは、選択肢を増やしてくれます。
選択肢を整理することも手伝ってくれます。
でも、最後に、
「私たちは、これを残す」
と決めるのは、人です。
AIによって「つくる」が簡単になるほど、「えらぶ」、そして「すてる」という人間の判断は、むしろ大切になっていくのではないでしょうか。
おわりに
「つくる」より、「えらぶ」。
「えらぶ」より、「すてる」。
選択肢が増えた時代だからこそ、何を足すかだけではなく、何を残すかを考えてみる。
チラシも、SNSも、Webサイトも。情報をひとつ減らしてみると、それまで埋もれていた大切なものが、ふっと見えてくることがあります。
何をつくるかより、何を残すか。
何を残すかより、何を捨てるか。
そこに、その会社らしさや、経営者の意思が表れるのだと思います。
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