宮城県よろず支援拠点チーフコーディネーターの佐藤です。
本コラムは「チーフの視点」として、中小・小規模事業者の経営者に向け、経営戦略に対する新たな気づきをお届けします。
前回にひきつづき「小規模事業者だからこそ実現できるイノベーションと事業成長」について、事例を交えながら数回にわたりお伝えします。
今回のテーマは、
「新商品開発は、統合/切り出しで専門特化せよ」 です。
<シリーズ:中小企業こそイノベーションの担い手である>
①中小企業の労働生産性を、取り戻せ。
②中小企業の成長戦略「予期せぬ成功」を使え。
③新販路開拓は、価値の再定義をせよ。
④新商品開発は、統合・切り出しで専門特化せよ。 ◀今回

1.新商品開発戦略とは?
新商品開発戦略とは、既存の市場に、新商品を投入する戦略です。
これまでにお示ししたアンゾフの成長マトリクスでは左下の領域です。

既存の市場へ新商品を展開する戦略とは、例えばラーメン屋さんに例えるならば、もともとサイドメニューとして出していた「チャーシュー」が人気だったため、それを主役にした「チャーシュー丼」を商品化するとともに、「ラーメン+チャーシュー丼」のセットを打ち出したことで、客単価が増加するような事例が当てはまります。
2.新商品開発は、提供方法を統合したり分割したりして特化せよ
新商品開発は、すでに一定数存在する顧客に対し、新しい商品を投入してより購買意欲を高めていきます。
新商品開発戦略のポイントは、「すでに売れているものの中に、次の柱がある」という視点です。
- 単品として人気があるものはないか?
- 組み合わせを変えれば価値が上がるものはないか?
- 一部を切り出せば専門商品になるものはないか?
こうした視点で見ていくと、「気づかなかったけれども、すでに起きている成功」が見えてきます。
これは以前に説明した「予期せぬ成功」と同じです。中小事業者にとって、最も成功確率が高く、最もリスクの小さい戦略です。
つまり、新商品とは必ずしも新しいものを作ることではありません。
すでにある価値を、商品として成立させること。
ゼロから商品を生み出したのではなく、すでに売れているものを「商品として再定義する」ことに他なりません。
■新商品開発の支援事例
家具小売店が、家具販売やインテリアコーディネートの傍らで行っていた「家具修理」のスペシャリティに着目し、1つの新商品として専門特化させ、売上の柱になった事例を紹介します。
当該事業者さんは、お客様の生活上の悩みに親身に耳を傾け、丁寧なコーディネートやインテリアの提案をすることが得意でした。その中の1つの事業に「家具修理」がありました。
私が内容をヒアリングをしたところ、家具の修理は一般的な家具屋さんだけではできる範囲に制限があることが分かりました。
当社は、建具屋さん、工芸品修理屋さん、塗装屋さんや照明器具屋さんなど、総勢12名の多様な職人ネットワークを使って修理提案をしており、その結果よそで断られた家具修理にも対応できるという、唯一無二の強みがあることが分かりました。
こうした他社ではできない家具修理サービスを専門特化させ、絶対に修理依頼を断らない、最後の砦としての家具修理サービスを提案しました。尖ったサービスにするために、ネーミングや事例紹介、プレスリリースまで一貫してサポートした結果、メディア取材などにもつながり、事業の1つの柱にまで成長した事例です。
【支援事例】
家具修理サービスの強みを活かしたブランディングで売上150%へ。
これまで目立たなかった家具修理サービスの強みや、一部顧客にはぴったりとはまっていた点に着目し、新サービスに格上げした事例です。
3.新商品開発のポイント
商品開発のポイントは、「すでにある価値を、商品として見える形にできているか」を問い直すこと。
成長の種は「会社の外」ではなく「会社の中」にあります。
日々の業務の中で、一部の顧客に強く支持されている要素や、繰り返し選ばれている理由があるはずです。
それが商品として整理されていないだけ、というケースは少なくありません。
つまり、新商品とは「新しく作ること」ではなく、すでにある強みを、商品として成立させることなのです。
以下、自社を振り返るチェックリストです。
■新商品開発チェックリスト
- 繰り返し選ばれている商品はないか?
- 「これ目当て」と言われたことはないか?
- 単品を主役にできないか?
- セット化で価値を高められないか?
- 一部を切り出して専門化できないか?
一つでも当てはまれば、それは新商品開発の種です。
すでにある価値を、分かりやすくすること。ここが成長の分岐点になるのです。
つづく
===筆者について==============================
宮城県よろず支援拠点チーフコーディネーター 佐藤 創
(中小企業診断士/高度情報処理技術者/ブランドマネージャー1級)
経営を左右する戦略論とマーケティング、ブランディング、財務戦略をミックスした
独自の成長支援、財務戦略支援が得意分野。「中小企業・小規模事業者こそイノベーシ
ョンの担い手である」を合言葉に経営支援を行う。
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