コーディネーターブログ

【チーフの視点】新販路開拓は、価値の再定義をせよ。

宮城県よろず支援拠点チーフコーディネーターの佐藤です。
本コラムは「チーフの視点」として、中小・小規模事業者の経営者に向け、経営戦略に対する新たな気づきをお届けします。

前回にひきつづき「小規模事業者だからこそ実現できるイノベーションと事業成長」について、事例を交えながら数回にわたりお伝えします。

今回のテーマは、
「新販路開拓は、商品の見せ方を変えよ」 です。

<シリーズ:中小企業こそイノベーションの担い手である>
①中小企業の労働生産性を、取り戻せ。
②中小企業の成長戦略「予期せぬ成功」を使え。  
③新販路開拓は、価値の再定義をせよ。  ◀今回

1.新販路開拓戦略とは?

新販路開拓戦略とは、自社の既存商品を、新たな顧客や市場に展開する取り組みです。

前回お示ししたアンゾフの成長マトリクスでは右上の領域です。

既存の商品を新販路に展開する戦略とは、例えば飲食店に例えるならば、近隣の住民に主に利用いただいていた店舗が、デリバリーなどを通じて、すこし遠方の方にも利用範囲を広げていくような取り組みが該当します。

2.新販路開拓は、既存商品の違った価値に焦点を当てよ

市場浸透が「同じ土俵で勝ち切る戦略」だとすれば、新販路開拓は「土俵そのものを変える戦略」と言えます。

ここで重要になるのは、「この商品は、本当にこの市場でしか売れないのか?」という視点です。
多くの中小企業は、自社の商品やサービスを「自分たちが考える当たり前の売り方」でしか捉えていません。
しかし、視点を変えると、同じ商品でも全く違う価値を持つことがあります。

つまり、新販路開拓の本質は、「別の市場において、自社商品の新たな意味を見つけること」にあります。

例えば、ある商品が「日常消費品」として売られていたとしても、別の市場では「贈答品」になるかもしれません。あるいは「業務用」として使われていたものが、「個人向けの便利商品」として受け入れられることもあります。

この「価値の再定義」ができるかどうかが、新販路開拓の成否を分けます。

■新販路開拓の支援事例

地方のアパレル用品卸売店が、新たな販路としてコンビニを選択し、コンビニで洋服を販売する「コンビニ・ブティック」事業を展開した支援事例を紹介いたします。

当該事業者さんは、日帰り温浴施設や道の駅、旅館・ホテルの売店の婦人服売り場が主な取引先でした。東北各地の取引先とご商売をしていましたが、コロナ禍で販路が完全に途絶えてしまいました。

その際、コロナ禍でも主要顧客であるシニア女性が集まる場所で婦人服を販売するために、新たな市場としてコンビニを選択しました。特に地方都市のコンビニをターゲットとして、単に洋服を売るのではなく「人生百年時代の新しい洋服選びの選択」や、遠出できないシニア女性への買い物提案である「買い物困難者対策」という新しい価値を打ち出して販路開拓に成功しました。

【支援事例】
アパレル卸売業が、コロナ禍で新たな業態「コンビニ・ブティック」を実現。

この事例の事業者様は、現在コンビニ・ブティック事業がさらに拡大。
なんと首都圏のコンビニまで進出し、目覚ましい成長を遂げています。

3.新販路開拓のポイント

新販路開拓戦略のポイントは、「誰にとっての価値なのか」を問い直すことです。
前回説明した「予期せぬ成功」を活用することも含みます。

自社にとっての当たり前は、他の市場では当たり前ではありません。逆に言えば、これまで見えていなかった市場において、自社の商品が“刺さる理由”が存在する可能性があります。

そのためには、

  • この商品は他の誰に使われ得るか?
  • 使う場面を変えたらどうなるか?
  • 他の市場ではどんな価値として認識されるか?

といった視点で、自社商品を見直すことが重要です。

市場が伸びないと嘆く前に、「市場を変えられないか」を考えてみる。これが、新販路開拓の出発点です。

中小企業にとって、大きな投資を伴わずに成長できる有効な戦略の一つですので、ぜひみなさまの会社でも検討してみてください。

つづく

===筆者について==============================
宮城県よろず支援拠点チーフコーディネーター 佐藤 創
(中小企業診断士/高度情報処理技術者/ブランドマネージャー1級)
経営を左右する戦略論とマーケティング、ブランディング、財務戦略をミックスした
独自の成長支援、財務戦略支援が得意分野。「中小企業・小規模事業者こそイノベーシ
ョンの担い手である」を合言葉に経営支援を行う。
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