コーディネーターブログ

「それ、誰のため?」伝え方は、相手の顔が見えてから。

こんにちは。
宮城県よろず支援拠点コーディネーターの酒井裕希です。

チラシやSNS、ホームページをつくるとき、

「もっと目立つ色にした方がいい」
「SNSだから、もう少し親しみやすく」
「高級感のあるデザインにしたい」
「若い人向けだから、もっとポップに」

そんな言葉が飛び交うことがあります。
どれも、間違っているわけではありません。

でも、少し立ち止まって考えてみると、

その「目立つ」は、誰にとって目立つのでしょう?
その「親しみやすい」は、誰にとって親しみやすいのでしょう?

先日開催したオンラインセミナー「『それ、誰のため?』から始める、伝え方の決め方。」では、そんな問いから、コピーやデザインなどの「伝え方」について考えました。今回は、その内容から少しご紹介します。


「目立つ」と、「届く」は同じではない

広告やチラシの相談をしていると、

「もっと目立たせたい」

という言葉をよく耳にします。
もちろん、気づいてもらうことは大切です。

たくさんの商品が並んでいる売り場。
たくさんの投稿が流れてくるSNS。
たくさんの看板が並ぶ街中。
その中で、自分たちの存在に気づいてもらわなければ、コミュニケーションは始まりません。

では、目立てば売れるのでしょうか。

赤くすれば売れる。
文字を大きくすれば売れる。
派手な写真にすれば売れる。

そんな単純な話ではありません。

セミナーでは、赤いチューリップが並ぶ中に、一輪だけ黄色いチューリップがある写真を紹介しました。

黄色い花は、確かに目立ちます。
でも、それだけで「黄色いチューリップが欲しい」と思うわけではありません。

目立つことは、気づいてもらうきっかけにはなる。

でも、

「目立つ」と「届く」は、同じではない。

ここを分けて考えることが大切です。


お客様は「目立つもの」が欲しいわけではない

では、お客様は何を求めているのでしょうか。
答えは、とてもシンプルです。

お客様は、「欲しいもの」が欲しい。

企業には、自分たちが提供できる商品やサービスがあります。一方、お客様には、求めているものや、まだ本人もはっきりと言葉にしていない欲求があります。その二つが重なったときに、「これ、自分にいいかも」という気持ちが生まれます。

セミナーでは、これを「欲しい人に、欲しいものを、欲しいときに届ける」というマーケティングの基本として紹介しました。

たとえば、喉が渇いているときに飲む水。水そのものは同じでも、暑い日にたくさん歩いた後に飲めば、とてもおいしく感じます。商品そのものだけではなく、誰が、どんなときに、それを必要としているのか。そこまで重なったとき、商品の価値は大きくなります。

どんなに広告が目立っていても、お客様が求めているものと合っていなければ、「欲しい」にはつながりません。

大切なのは、大きな声で呼びかけることだけではなく、欲しい人に、きちんと届くこと。「目立たせること」を考える前に、「誰に届けたいのか」を考える必要があります。


「誰に届けるか」を、もっと具体的に考える

では、「誰に届けるか」は、どこまで考えればよいのでしょうか。

「うちの商品は幅広い年代の方に使っていただけます」
「男性にも女性にもおすすめです」
「できるだけ多くの方に知ってほしいです」
事業者の方とお話ししていると、こうした言葉を聞くことがあります。

もちろん、実際に幅広い人が利用する商品やサービスもあります。
ただ、「買える人」と「今回、伝えたい人」は、必ずしも同じではありません。

たとえば、
「40代女性」
「仙台市在住」
「美容に関心がある」
ここまで設定すると、かなり具体的になったように見えます。

でも、その人がどんな暮らしをしているのかまでは、まだよく見えません。

同じ40代女性でも、
朝から子どもの送り迎えで忙しい人。
仕事帰りに街中で買い物をする人。
休日は家でゆっくり過ごしたい人。
新しいお店を見つけると、すぐに行ってみたくなる人。

暮らしはまったく違います。 年齢や性別、住所などの属性だけでは、まだ「人」の姿までは見えてこないのです。


属性だけでなく、「その人の場面」まで考える

そこで、もう少し近づいて考えてみます。

仕事が終わるのは18時30分くらい。
新しいものが好きで、外食も多い。
町中華が好き。
でも、一人で初めてのお店に入るのは少し勇気がいる。

ここまでくると、なんとなく一人の人が見えてきませんか。

仕事帰りに、どんな気持ちで歩いているのか。スマートフォンで、何を見ているのか。お店の前で、何を不安に感じるのか。どんな一言があれば、「ちょっと入ってみようかな」と思えるのか・・・

属性ではなく、その人の生活や行動、気持ちまで想像してみる。

すると、伝えるべきことも変わってきます。

セミナーでは、「N=1」のコミュニケーションとして、一人の人が思い浮かぶくらいまで解像度を上げる考え方を紹介しました。

顔が想像できると、場面が描ける。

場面が描けると、言葉の形が見えてくる。

「みんな」に向かって大きな声で話すより、「この人に伝えたい」という一人が見えている方が、言葉は具体的になります。


お客様を知るヒントは、日々の中にある

ただし、相手を具体的に考えることと、「きっと、こんな人だろう」と勝手に決めつけることは違います。

「若い人はSNSを見るだろう」
「高齢者はデジタルが苦手だろう」
「女性なら、こういう色が好きだろう」
そんな想像だけで考えてしまうと、かえって実際のお客様から遠ざかってしまうことがあります。

大切なのは、目の前のお客様をよく見ることです。

何を買っているのか。
どんな質問をするのか。
どこで迷っているのか。
どんな言葉に反応するのか。
どんなタイミングで来店するのか。

普段の接客や問い合わせの中にも、たくさんのヒントがあります。

セミナーでは、「お客様理解は、想像ではなく、観察から。」という話をしました。

新しい調査を始めなくても、いつものお客様を少し丁寧に見るだけで、気づくことはあります。

「この商品を買う人は誰だろう」だけではなく、「この人は、どんな場面で、この商品を欲しいと思うのだろう」と考えてみる。「人」だけではなく、「場面」まで見る。そこまで考えると、伝え方はもっと具体的になります。


同じ人でも、見る場所が変われば伝え方は変わる

「誰に伝えるか」と同じくらい大切なのが、「どこで伝えるか」です。
同じ人に伝える場合でも、見る場所が変われば、言葉の役割は変わります。

たとえば、テレビCMや街中の広告。
その商品に興味がない人も目にします。

じっくり説明するより、
「なんだろう」
「ちょっと気になる」
「面白い」
と、一瞬でも関心を持ってもらうことが大切かもしれません。

一方で、店頭のPOPを見る人は、すでに商品を目の前にしています。

「買おうかな」
「どっちにしようかな」
「自分に合っているかな」
そんなふうに、選ぶ理由を探しているかもしれません。

そこでは、興味を引くだけではなく、
「どんな商品なのか」
「自分にどんなメリットがあるのか」
が直感的にわかる方が役立つことがあります。

同じ商品でも、同じ言葉をどこにでも置けばよいわけではありません。 誰が見るのか。
どこで見るのか。
どんな状態で見るのか。そこまで考えることで、必要な伝え方が見えてきます。


「どう伝えるか」の前に、「何を伝えるか」

チラシや広告をつくるとき、私たちはつい「どう見せるか」から考えてしまいます。

何色にするか。
どんな写真を使うか。
どんなフォントにするか。
キャッチコピーをどうするか。

もちろん、どれも大切です。
でも、その前に整理したいことがあります。

何のため?
誰のため?
どう感じてほしい?
どう動いてほしい?

ここが決まって、はじめて、

どんな言葉にするか。
どんな写真を使うか。
どんな色にするか。
どんな形にするか。

という「どう伝えるか」が決まっていきます。

セミナーでは、「何を言うか」が決まらなければ、「どう言うか」は機能しない。という話をしました。

デザインには、必ず相手がいます。

だからデザインは、単に「きれいにつくること」ではありません。
相手に何かを伝え、感じてもらい、行動につなげていく。

デザインも、コミュニケーションです。


好き嫌いではなく、「相手に届くか」で考える

実際の制作現場では、いろいろな意見が出ます。

「もっと目立つ色にしよう」
「前のデザインの方が良かった」
「なんとなく、うちらしくない」

どれも、その人なりの理由があると思います。

でも、
「私はこっちが好き」「私はこっちが嫌い」
だけで議論すると、なかなか答えは出ません。

そんなときは、表現そのものから少し離れて考えてみます。

誰が見るのか。
どこで見るのか。
その人に何を伝えたいのか。
見た後、どうしてほしいのか。

そうすると、「もっと目立つ方がいい」という意見も、「この場所では、一瞬で気づいてもらう必要があるから、もう少し視認性を高めよう」と、理由のある判断に変わります。

逆に、「ここでは、すでに商品に興味を持っている人が見るから、目立たせるより、選ぶ理由をわかりやすく伝えよう」という判断になるかもしれません。

大切なのは、「目立つか、目立たないか」「好きか、嫌いか」という二択ではありません。その表現が、相手に対してきちんと機能しているか。そこを判断の基準にすることです。


迷ったときの合言葉は、「それ、誰のため?」

広告や発信には、正解がひとつだけあるわけではありません。

元気なデザインが合うこともある。
静かなデザインが合うこともある。

親しみやすい言葉が合うこともある。
少し距離のある、丁寧な言葉が合うこともある。

短いコピーが機能する場所もあれば、
きちんと説明した方がよい場所もあります。

だからこそ、迷います。

どれが良いのか決められない。
表現がうまくまとまらない。
そもそもアイデアが浮かばない。

そんなとき、いきなりデザインや言葉を探すのではなく、一度、この問いに戻ってみてください。

「それ、誰のため?」

誰のためなのかが見えてくると、何を言うべきかが見えてくる。何を言うべきかが見えてくると、どう伝えるべきかも、少しずつ見えてきます。セミナーでも、この言葉を「迷った時に立ち返るための合言葉」として最後に紹介しました。


おわりに

伝えることを考えていると、つい「自分たちが何を言いたいか」に意識が向きます。商品の特徴、サービスへのこだわり、会社の歴史、伝えたい思い・・・どれも、大切です。

でも、コミュニケーションは、相手がいて初めて成立します。

自分たちが言いたいことと、相手が知りたいこと。
自分たちが見せたいものと、相手が欲しいもの。
その間にある距離を、言葉やデザインで近づけていく。

それが、「伝え方を考える」ということなのだと思います。

目立つかどうか。
格好いいかどうか。
好きかどうか。

そこで迷ったら、もう一度。

「それ、誰のため?」

相手の顔が見えてくると、伝えるべきことが見えてくる。 そして、伝えるべきことが見えたとき、デザインや言葉にも、理由が生まれます。


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