
こんにちは。
宮城県よろず支援拠点 生産性向上支援センターの本田です。
最近は、人手不足や物価高騰などを背景に、「もっと生産性を上げたい」「少ない人数でも仕事を回せるようにしたい」と考える事業者さんが増えています。
その手段として、ITツールの導入や業務のデジタル化、自動化はとても有効です。
たとえば、Excelでの集計作業を自動化する。
紙の申込書をGoogleフォームに置き換える。
手作業で行っていた請求書作成や売上集計を、クラウドサービスで効率化する。
こうした取り組みは、うまく使えば、作業時間の短縮やミスの削減につながります。
一方で、現場を見ていると、少し気になることもあります。
それは、「自動化すること」自体が目的になってしまい、かえって手間が増えているケースです。
自動化したのに、なぜか忙しくなる
本来、ITツールや自動化は、仕事を楽にするためのものです。
ところが実際には、次のようなことが起きる場合があります。
たとえば、月に1回しか行わない簡単な作業を自動化するために、複雑なExcelマクロを作る。
最初は便利に見えたものの、少し入力形式が変わるたびにマクロが動かなくなる。
修正できる人が限られていて、その人が不在だと誰も対応できない。
結果として、もともと手作業なら10分で終わっていた作業のために、毎回30分、1時間と調整に時間がかかってしまう。
これでは、本末転倒です。
もちろん、自動化そのものが悪いわけではありません。
問題は、自動化によって減る手間よりも、自動化を維持するための手間の方が大きくなってしまうことです。
AIで「作ること」は簡単になってきた
最近は、生成AIの登場によって、簡単なツールであれば以前よりもずっと作りやすくなりました。
Excelの関数を考えてもらう。
Google Apps Scriptで簡単な処理を書いてもらう。
集計用の表や、入力フォームの案を作ってもらう。
ちょっとした業務改善のアイデアを出してもらう。
以前なら、プログラミングができる人に頼まなければ難しかったことも、AIに相談しながら形にできるようになりました。
これは、とても大きな変化です。
小規模事業者や中小企業にとっても、自分たちで業務改善に取り組みやすくなったという意味で、大きな可能性があります。
しかし、ここにも注意点があります。
AIを使えば、ツールを「作る」ハードルは下がります。
でも、そのツールを使い続けること、直すこと、現場に定着させることのハードルまで、すべて下がるわけではありません。
作れることと、使い続けられることは違う
AIが作ってくれたツールでも、業務で使う以上、以下のようなことについては確認しておく必要があります。
- 入力する項目が変わったら、誰が修正するのか
- エラーが出たとき、誰が原因を調べるのか
- 担当者が変わっても、同じように使えるのか
- 処理結果が本当に正しいか、誰が確認するのか
- そもそも、そのツールが何をしているのか、社内で理解できているのか
こうした点が曖昧なままツールだけを増やしてしまうと、かえって現場の負担になることがあります。
「便利そうだから作ってみた」
「AIに聞いたらできそうだった」
「せっかくだから自動化してみた」
その気持ちは、とても自然ですし、自分たちの仕事をより良くするためには重要なことです。
しかし、実際の業務に入れる前には、少し立ち止まって考えることも必要です。
自動化する前に確認したい3つのこと
自動化を考えるときには、次の3つを確認してみてください。
1つ目は、その作業がどれくらい繰り返されるかです。
毎日、毎週のように発生する作業であれば、多少の手間をかけて自動化しても効果が出やすくなります。
一方で、年に数回しか発生しない作業や、毎回内容が大きく変わる作業は、手作業のままにしておいた方が早い場合もあります。
2つ目は、自動化した後の管理を誰が行うかです。
ツールは作って終わりではありません。
業務のやり方が変われば、ツールも見直す必要があります。
そのときに、誰が直せるのか、誰が確認するのかを考えておかないと、便利なはずの仕組みが、いつの間にか「触れないもの」になってしまいます。
最後に、本当に自動化が必要な作業なのかです。
件数が少ない、判断が毎回違う、作業時間がもともと短い。
そのような仕事は、無理に自動化しなくても良いかもしれません。
ただし、手作業のままで良いということは、何もしなくて良いという意味ではありません。
手順を整理する。
チェックリストを作る。
入力様式を統一する。
担当者によってやり方が違わないようにする。
こうした小さな改善だけでも、十分に生産性向上につながることがあります。
大切なのは、デジタル化することではなく、仕事を楽にすること
生産性向上の目的は、ITツールを増やすことではありません。
自動化された仕組みを作ることでもありません。
目的は、現場の仕事を少しでも楽にすること。
ミスや手戻りを減らすこと。
空いた時間を、お客様への対応や、新しい取り組みに使えるようにすることです。
そのためには、「この作業は自動化できるか」だけでなく、
「自動化した方が、本当に現場は楽になるのか」
を考える必要があります。
AIによって、簡単なツールを作ることは以前より身近になりました。
だからこそ、これからは「作れるかどうか」だけでなく、「使い続けられるか」、「本当に仕事を減らすのか」という視点が、ますます大切になります。
ITツールやAIは、上手に使えば心強い味方になります。
ただし、現場の仕事の流れや、使う人の負担を見ないまま導入してしまうと、かえって手間を増やしてしまうこともあります。
「どの作業を自動化すべきか」
「どこは手作業のままで良いのか」
「まず何から見直せば良いのか」
迷ったときは、いきなりツールを選ぶのではなく、まず現場の仕事の流れを整理してみることをおすすめします。
生産性向上支援センターでは、事業者の皆さまの現場の状況をお聞きしながら、無理のない業務改善やIT活用の進め方を一緒に考えていきます。









