コーディネーターブログ

「最高に美味しい」店をなぜ選ばなかったのか?3歳児が教えてくれた、購買を決める”今だけの価値”

こんにちは!
宮城県よろず支援拠点コーディネーターの鈴木貴之です。

先日、妻の誕生日があり、ケーキを買いに行くことになりました。

これまでは、決まって地元の個人店にお願いしていました。
そこは本当に美味しいケーキを作る店で、私の中では「誕生日ケーキ=あそこ」という絶対的な信頼があったからです。

だから毎回誰かの誕生日がある時はそちらにお願いしていました。
もちろん今回も当然、そこへ行くつもりでした。

しかし、妻が言いました。

「今回は(多店舗展開しているお店)に行きたい。3歳の娘に自分で選ばせてあげたいの」と。
(個人店は注文ベースで誕生日ケーキを作るのですが、こちらの店舗はいつ行ってもホールケーキがあります)

妻の希望なので、私はもちろんそれに従いました。

正直なところ、味だけで言えば、いつもお世話になっている個人店の方が上かもしれません。
ですが、「妻の希望」と、何より「娘に選ばせたい」という言葉に、私はハッとさせられました。

そして、実際にお店へ行ってみると…妻のその判断が正しかったと確信しました。

ガラスケースの前で、娘は目を輝かせながら「あれがいい!」「こっちもかわいい!」と、自分の力で真剣にケーキを選んでいました。

その「選ぶ過程」が、たまらなく楽しそうで、こちらも思わずほっこりしてしまったのです。

家に帰ってからも、娘は自分が選んだケーキを食べる時、最高に嬉しそうな顔をしていました。
そして、次の日もその次の日も、「あのケーキ屋さんで選んだの!」と、何度もその時の話を私にしてくれるのです。

この小さな出来事は、私にマーケッターとして、そして私自身も店舗経営をしている身として、非常に重要な教訓をいくつか与えてくれました。


「最高品質」よりも「今しかできない体験」が勝る時がある

私の頭の中には「美味しいケーキ=最高のサービス」という方程式がありました。
しかし、妻と求めていたのは、単なる「味」という”客観的な品質”ではありませんでした。

彼女が求めたのは、「3歳の娘が自分でケーキを選び、その喜びを家族で分かち合う」という、”今しか体験できない、主観的な感情価値”だったのです。

子どもが自分で物を選びたいという意欲、そしてその過程を見て楽しむことができるのは、本当に短い期間だけです。
(大きくなったらこの感動は薄くなっていってしまうでしょう)

この「今だけの価値」にフォーカスすることで、(多店舗展開しているお店)は「最高の味」という壁をやすやすと超え、私たち家族の購買行動を変えました。

【質問】 あなたの提供するサービスや商品は、顧客にとって「今、ここでしか得られない体験」を提供できていますか?単なるスペックや技術論で語るのではなく、顧客の「今この瞬間」の感情を動かす体験を設計できているかが、ロイヤリティを上回る鍵となります。

「意思決定者」の行動を設計する

今回の購買の鍵は、妻の「娘に選ばせてあげたい」という願いでした。

私たちは、ターゲット顧客を「購入する人」として定義しがち。

しかし、購買行動は、「購入者(妻)」「利用者(家族全員)」「意思決定に影響を与える人(娘)」という複数の視点で成り立っています。

(多店舗展開しているお店)は、(意図しているかどうかはわかりませんが)「娘が自ら選ぶ楽しさ」という体験を提供することで、「意思決定に影響を与える人」の感情を最大限に高めたと言えます。

【質問】 あなたの店に来るお客様は、誰の要望で来ていますか?そして、その「誰か」の感情を揺さぶる体験を提供できていますか?

「語りたくなるプロセス」を設計する

なぜ娘は、家に帰ってからも何度もケーキの話をしたのでしょうか?
それは、彼女が「選ぶ」というプロセスに主導的に参加し、成功体験を得たからです。

単に「美味しいケーキを食べた」という結果ではなく、「自分で選んだ」という物語こそが、家族にとっての価値となり、そして「語りたくなる体験」となったのです。

【質問】 あなたの店での「購入プロセス」は、単なる手続きになっていませんか?顧客が「語りたくなる」ような、参加型で、感情を揺さぶる瞬間を意図的に作り出せていますか?この「語りたくなる体験」こそが、最高の口コミとなり、永続的なファンを生み出します。


ワーク:あなたの店で「今だけの体験価値」を見つける

最高品質の追求は大切です。

しかし、顧客が求めているのは、(今回のケースのように)しばしばその品質を上回る「感情的な体験」だったりします。

あなたの店舗で、顧客が主役となり、「語りたくなる体験」を生み出すためのアイデアを一緒に考えてみましょう。

以下の問いに答えてみてください。

問い 1:誰の感情を動かすか?

あなたのサービス・商品を購入・利用する人の中で、「決定権は持たないが、感情を動かすことで購買に強い影響を与える人(今回でいう3歳の娘さん)」は誰ですか?
(例:小学生の孫、ペット、部活の後輩など)

問い 2:その人に「選ぶ楽しさ」をどう提供するか?

その「影響を与える人」が、主導的にあなたのサービスを選ぶことができるような、シンプルで楽しい「参加型プロセス」を一つ考えてみてください。
(例:商品を選ぶ際の「色当てクイズ」、サービスの一部をカスタマイズできる体験、特典を自分で選べるコーナーなど)

問い 3:「今しかできない」価値をどう伝えるか?

その体験が「今」特別である理由を言語化してください。
(例:「この春限定のパッケージ」「お子様が〇歳までの特別な思い出」など)

このワークを通じて、あなたの店が提供できる「品質」を超えた「体験価値」を見つけ出し、顧客の心を鷲掴みにするアイデアを得て頂けたらうれしいです。


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