サポーターブログ

「楽になった」で終わらせない!―「標準化」のススメ

 こんにちは!宮城県よろず支援拠点生産性向上支援センター サポーターの長田です!


 以前のブログでは業務プロセス改革の最初の、そして一番大事な「小さな成功体験」についてお話ししました。
 今回は次のステップ、その小さな成功を社内に少しずつ広げていく、その方法をご紹介したいと思います。

1.小さな成功、その後に…

 「よし。この作業、ずいぶん楽になったね」

 IT化に取り組んだ現場で、そんな声が聞こえたら、まずは大成功です。

  • 毎日30分かかっていた入力作業が10分になった
  • 手作業で転記していたExcelが、ボタン一つで自動更新されるようになった
  • 山のような紙の日報をスマホ入力に変えたら、集計作業がゼロになった

 最初から大きなシステムを入れるよりも、こうした「目の前の小さな成功」から積み上げることが、何より大切だと言えます。

 現場に、「ITって本当に便利なんだ」という実感が生まれるからです。

 ところが、その数か月後

 「あれ、隣の部署ではまだ紙でやってるの?」

 「同じような作業なのに、こっちのツールは使えないの?」

 社長や現場リーダーの頭を悩ませる、こんな「改善の壁」にぶつかることがあります。

 実はここに、IT化を「一度きりの小さな成功」で終わらせず、会社全体に広げていくための「決定的な分かれ道」があります。

 そのカギを握るのが、標準化という考え方です。

2.次のカギは「標準化」

 例えば、請求書の処理業務で考えてみましょう。

 これまでは担当者が毎月、メールで届いた何通ものPDFを開き、会社名、日付、金額を

 目視で確認して、Excelへ手入力していました。
 そこで、「AI OCR(文字読み取り)」や「RPA(単純作業の自動化ツール)」を使い、

 PDFから必要な情報を自動で読み取り、Excelへ入力する仕組みを作ったとします。
 今まで一時間かかっていた仕事が15分になれば、現場にとっては大きな成果です。

 何より、「ITを使ったら、こんなに楽になった!」という実感が、現場に自信と活力を与えます。

 この小さな成功体験(クイックウィン)こそ、IT化を成功へ導く唯一無二のスタート地点であると言えるでしょう。

「成功体験」、その次の壁

 経理部での請求書処理がうまくいったので、社長は「よし、これを全社に広げよう!」と号令をかけます。
 ところが、営業部や他の拠点を確認してみると……。

  • 経理部では「(株)ABC」
  • 東京営業所では「株式会社ABC」
  • 大阪支店では「ABC社」

 ……同じ取引先なのに、表記の仕方がバラバラでした。

 さらに、保存するファイル名も、確認する項目も、承認をもらう順番も、部署ごとに独自のルール(あるいは暗黙の了解)

 が存在していたのです。
 これでは、せっかく作った「経理部専用の自動化ツール」を、そのまま他の部署で使うことはできません。

 無理に使おうとすればエラーを起こすか、余計な修正作業が発生してしまいます。

 これは、現場の努力が足りないからではありません。むしろ逆です。

 これまで、それぞれの担当者が「自分の持ち場を、一番効率よく回す方法」を、必死に工夫してきた結果なのです。

 つまり

 「特定の人や部署固有の方法」から、「誰でも、どこの部署でも同じ方法とするルール」に進化させる。
 このバトンパスこそが、標準化なのです。

標準化とは、「個性を消す」ことではない

 IT化における標準化は、シンプルに「共通ルールをつくる」くらいに考えてみてください。

 例えば、

  1. 請求書のPDFは、決められた一つのフォルダに入れる
  2. ファイル名は「日付_取引先名_金額」にする
  3. 顧客名は、統一された「顧客コード」で管理する
  4. 日報の入力項目(選択肢)を全社で揃える

 つまり、

  • 作業の標準化=「仕事の共通ルール」をつくること
  • データの標準化=「情報の共通言語」をつくること

 です。

 「誰がやっても、どこの部署でやっても、同じ結果になる土台」ができれば、ある部署で成功したIT化を、

 他の部署へ最小限のコストと手間で展開できるようになります。

3.「点」の改善が、会社を貫く「線」になる

 最初のIT化は、「請求書入力を楽にする」、「日報集計を楽にする」といった、

 一つ一つの作業を楽にする「点」を意識して実施すれば良いと思います。

 それぞれの点で成功したら、次は「仕事のやり方」や「データの持ち方」を揃える、「標準化」の段階に進むと、
 これまで分断されていた部署間の仕事が、

 受注 → 納品 → 請求 → 入金

 というように、スムーズに一本のバトンで繋がります。これが、IT化によって「点」が「線」になる状態です。
 大切なのは、最初から高価な基幹システムを入れることではありません。

 「一つの小さな成功」を、会社全体で使い回せる資産(標準)にすること。

 それこそが、IT投資の費用対効果を最大化する一番の近道なのです。

4.小さく始める。そして、揃えて広げる

 もちろん、明日からいきなり会社中の業務をすべて標準化する必要はありません。忙しい現場がパンクしてしまいます。

 一番失敗が少なく、現実的な実践ステップは以下の手順です。

【ステップ1】一つの「困りごと」をIT化して楽にする

 まずは特定の部署の、一つのExcel、一つの帳票、一日のうちの特定の定型作業から手を付けます。

 現場に「楽になった!」と成功体験を実感してもらうことが最優先です。

【ステップ2】うまくいった「やり方とデータ」を観察する

 成功したら、「なぜ自動化できたのか?」「どういうデータ形式だからうまくいったのか?」を確認します。

 成功の背景にある「ルール」を特定するフェーズです。

【ステップ3】「共通ルール(標準)」として少しだけ整える

 特定したルールを、他部署でも使える形に微調整します。「表記の揺れ((株)と株式会社など)を無くす」

 「ファイル名の命名ルールを決める」といった、小さな整理からで十分です。

【ステップ4】似た業務・隣の部署へ「横展開」する

 整えたルールと一緒に、最初に作った仕組みやツールを隣の部署へ展開します。

 ルールが揃っていれば、一からツールを作り直す必要はなく、ほぼゼロコストで効果を2倍、3倍に広げられます。

 「小さく試す → ルールを整える → 隣へ広げる」。

 このサイクルを回すことこそが、標準化、そして全社的なDX(デジタルトランスフォーメーション)への適切な一歩なのです。

5.私たちにご相談を!

 「この作業で成功した改善が他の作業や全社で活用できたら…」

 「これ、名前の付け方や入力項目を揃えたら、隣の部署でもそのまま使えるのでは?」

 こんな気持ちになってもらえれば、IT化・DX推進を次の一歩へと大きく前へ進めることができます。

 省力化という目に見える成果とは別に、現場のメンバーの心にちょっとした火をつける…

 そんな機会になってくれればしめたものです。

 まずは身近な一つの作業の「揃え方」から、一緒に整理してみませんか?


宮城県よろず支援拠点 生産性向上支援センター
宮城県よろず支援拠点 生産性向上支援センター

ご相談はこちらから